コインランドリー市場は5.2兆円規模のブルーオーシャン

コインランドリーコインランドリーと聞くと、「銭湯に併設されている暗い建物」とか「学生時代に漫画を読みながら時間を潰した場所」といったイメージを持っている人が少なくないのかもしれません。

洗濯機を持っていなかった学生が主な客層だった時代は過去の話で、今や一人暮らしの学生でも8割以上が洗濯機を所有する時代になり、こうした学生相手の古いコインランドリーは、街から姿を消しつつあります。

しかし、統計を見てみると、コインランドリーの数は減るどころかむしろ増え続けており、銭湯の隣にあったようなコインランドリーが次々と閉鎖される一方、新規オープンが怒涛の勢いで伸びているのです。

その結果、20年前は1万店弱だったコインランドリーの数は、現在では2倍以上の2万1000店にまで急増しています。一体、コインランドリー市場で何が起きているのでしょうか?

 

コインランドリー市場には、4.7兆円もの資金が流入する潜在的可能性が眠っている

コインランドリー

現在、日本の洗濯労働市場の規模は約5.2兆円と言われており、そのうち、クリーニング市場は約4000億円(8%)、コインランドリー市場は1000億円(2%)を占めていて、残り4.7兆円(90%)はなんと家事での洗濯によるものです。

これが何を意味するかと言うと、5兆円規模の洗濯労働市場のうち9割が家庭で無償労働として存在しており、彼らがコインランドリーなどの有料サービスを利用し始めると、4.7兆円が一挙にコインランドリー市場に流れ込むことを意味します。

クリーニング市場は1992年時点で5万店舗ありましたが、2017年時点で約2.3万店舗にまで激減しており、これは、高いお金を払ってクリーニングに出すのではなく、自分で洗濯をしたいと言う人が増えている証拠です。

では、こういった人たちがどこに流れているのかと言うと、それがまさに「コインランドリー」なのです。

コインランドリーが激増しているという事実は、4.7兆円もの資金が徐々にコインランドリー市場に流入しつつある証拠であり、コインランドリーは今もっとも熱いビジネスの一つと考えることができるのです。

現在、日本国内でコインランドリーを利用する人の割合は5〜10%程度。欧米諸国の20%と比較すると、まだまだ潜在的な需要が眠っていると言えそうです。

熱狂を見せるコインランドリービジネスを支えているのは家庭の主婦たち

コインランドリー

昔ながらのコインランドリーの閉鎖は、かつて学生がメインユーザーだった時代の終わりを象徴するものですが、次々と新設される新しいコインランドリーの主な顧客は主婦です。

これまで、コインランドリーの利用者の7割以上をアパート住まいの単身者や学生が占めていましたが、今では利用者の8割近くを家庭の主婦や社会的な進出を果たしたキャリアママが占めています。

女性の社会進出に伴って、女性が平日の昼間に家にいる時間が減り、週末に洗濯をする家庭が増えてきました。

4人家族だと1日に出る洗濯物の量は3kg程度ですが、1週間洗濯物をためるとその総量は20kgにも上ります。

家庭用の洗濯機の容量は5〜6kgものが大半で、週末にまとめて洗濯をしようとすると4回も洗濯機を回さなくてはなりませんし、そもそも週末が必ずしも晴れとは限らないでしょう。

仮に晴れていたとしても、4回も洗濯機を回して、脱水が終わるたびに洗濯物を外に干す作業を繰り返していると、洗濯をするだけで貴重な週末が終わってしまいます。

しかしコインランドリーへ洗濯物を持ち込めば、たった40分で一気に洗濯し、大型乾燥機を使ってたった30分で完璧にふんわりと乾燥させることができるのです。もちろん、待ち時間を使って買い物をすることだってできます。

そう考えれば、お金を払ってもコインランドリーを使いたいと考える主婦が増えているのも納得がいくでしょう。

たった100円で30万匹の布団のダニを完全に死滅させることができる

コインランドリー

コインランドリーが注目されるのは、こうした時短効果に合わせて、日に日に深刻さを増すアレルゲンも背景にあります。

春になると飛んでくる花粉や黄砂、そしてPM2.5の問題もあり、安心して洗濯物を干せる環境ではなくなりつつあるのです。

さらに、近年よく耳にするようになったハウスダスト。主な原因はダニの死骸やフンがアレルゲンだと言われていて、アレルギー性鼻炎だけでなく、喘息やアトピー性皮膚炎の原因にもなると言われています。

こうしたアレルギーの原因となる「チリダニ」は、布団一枚に対して2〜30万匹おり、厄介なことに、このチリダニは天日干しをしても死滅しません。

しかし、コインランドリーの業務用乾燥機で100円分乾燥させるだけで、チリダニが100%死滅することが分かっており、今後はアレルギー需要も見込むことができるのです。

家庭用洗濯機はコインランドリーの競合にはなり得ない

コインランドリー

拡大し続けるコインランドリー市場ですが、ライバル関係にあると思われがちな家庭用洗濯機とは競合しません。

なぜなら、家庭用洗濯機の容量は5kg程度であり、コインランドリーに設置されている業務用洗濯機並に容量を増やすことは物理的に不可能だからです。

家庭用の洗濯機にたくさん洗濯物を詰め込むと、脱水の際に洗濯機が大きな音を立てて踊り出し、途中でエラーになり停止してしまうことがあるでしょう。

コインランドリーで使われている業務用洗濯機は、アンカーという金属製の棒を地面に埋め込むことで洗濯機を地面に固定させており、大容量の洗濯物を詰め込んでも、洗濯物の遠心力によって洗濯機が動かず安定するのです。

こうした設備を家庭で整えることはできないため、家庭用洗濯機とコインランドリーは完全に棲み分けることができます。

時間はかかっても、コインランドリーはコンビニや携帯のように普及するだろう

コインランドリー

「家に洗濯機があるのだからコインランドリーは流行らない」と考える人は少なくないはずです。

しかし、今や当たり前のように普及しているコンビニや携帯電話も、登場したばかりの頃はそんな風に言われていました。

コンビニが世間に出始めた頃、割高、品揃えが悪い、スーパーで買った方が安いと世間の評価は決して高くありませんでしたが、蓋を開けてみれば、今やコンビニは生活インフラとしてなくてはならない存在になっています。

また、携帯電話に関しても、家の電話と公衆電話があるのだから電話を持ち歩く必要はないという声が非常に多く、1990年代初頭にとあるシンクタンクが携帯電話の普及率について試算したところ、2,000年代の携帯電話の普及率は500万代程度と予測されていました。

しかし現実には、シンクタンクの予想を遥かに超える6,000万代もの携帯電話が使われるようになったのです。

結局のところ、コンビニや携帯電話が「不必要」と言われても、これだけ広く普及したのは、これらが便利で一度定着してしまえば「なくてはならない」存在になったからでしょう。

これはコインランドリーにも同じことが言えるはずです。

この先どれだけ我々の暮らしが変化しようとも、「服を洗う」という行為は決して無くならず、むしろ暮らしの多様化に伴って洗濯に費やす時間や手間を最小限に圧縮し、他のことに時間を使いたいと考える人が増えるのではないでしょうか。

静かに盛り上がりを見せるコインランドリー業界。もしかすると、コインランドリーを使うことが当たり前の世界は、すぐ目の前まで来ているのかもしれません。

参考サイト
クリーニング業の市場構造・市場行動・市場成果
コインランドリー|市場調査データ
進化するコインランドリー 四半世紀で店舗数は2倍に
市場の将来性と安定性
コインランドリー投資の急成長を裏付ける、日本の社会的変化

コインランドリー市場は5.2兆円規模のブルーオーシャン 2023-12-04T00:17:57+00:00 Electrolux Professional