コインランドリー事業は、売上が景気にあまり左右されず、比較的安定しており不動産などと比べても、比較的少ない投資額でスタートすることができます。
しかし、デメリットが全くないわけではありません。コインランドリーは事業内容がある程度フォーマット化されていることから、コンビニなどと同じように差別化が難しいという問題があるのです。
ビジネスとは、付加価値が高く、しっかりとコンセプトが差別化されているものほど繁盛しますが、そう言った意味では、ビジネスという壮大な海には、真っ赤な海(レッドオーシャン)か真っ青な海(ブルーオーシャン)のどちらかしか存在しないのかもしれません。
ビジネスという海は、真っ赤な海か真っ青な海のどちらかしか存在しない。
コーヒーや日常家具のようにもう何百年も同じように飲んだり、使われたりして、既に完成してしまっているものに対して、イノベーションを起こすことは想像以上に難しいことなのでしょう。
これは、コインランドリーも同じことで、既に事業が完成し、安定している分、業界の常識が一気に変わってしまうようなイノベーションは簡単には起きにくいということでもあります。
こういった既に完成した事業に新たな付加価値をつけて、他社と差別化をしていくためには、コインランドリー事業と自分が好きなことや得意なことを組み合わせて、自分にしか生み出せない新しい価値を生み出していく必要があるのです。
宇多田ヒカルがつくる宇多田書店「コインランドリーと得意なことを掛け合わせて、真っ青な海を作り出す。
ひと昔前は、多くのことに手を出せばすべて2流で終わり、多芸は無能で、すべて中途半端で終わると言われました。
しかし、何と何が組み合わさって新しい価値が生まれるか分からない現代では、一流ではないからといって、二流であるとは限りません。
実際、これまでの9割近いイノベーションはiPhoneやPepperのようなものではなく、異なった既存事業と既存事業の掛け合わせによって生まれたものなのです。
例えば、ヨガ、カフェ、読書など、自分の好きな事とコインランドリーを掛け合わせて、アイディアを統合させれば、オリジナリティが高い事業をつくることができます。
飲食店「俺のフレンチ」は、高級レストランと立ち食いそばの概念を掛け合わせ、お店を狭くして、回転率を上げることで、高級料理をリーズナブルな値段で提供するというイノベーションを起こしました。
本当のイノベーションとは既存事業と既存事業の掛け合わせ。
宇多田ヒカルさんの将来の夢は、自分が影響を受けた本を集めて販売する「宇多田書店」をつくることなのだと言います。もし、コインランドリーのオーナーさんが読書好きなのであれば、コインランドリーと本屋を掛け合わせて、「ランドリー書店」をつくってみても面白いかもしれません。
バックストリート・ボーイズやブリトニー・スピアーズをヒットさせた人物として知られ、プロデュースした23作品が全米1位を獲得しているマックス・マーティンは、30年間業界で活躍し続ける音楽プロデューサーです。
マーティンがこれだけ変化の激しい音楽業界でヒットを生み続けられる理由は、ベテランである彼がタッグを組む多くミュージシャンが若手だという部分にあります。
ベテランが持つ幅広い知識や大局観と、まだ業界に入ってきたばかり若手の新鮮さや遊び心を組み合わせることで、常に新しい音楽を生み出し続けていることが、マーティンが30年以上に渡って活躍している大きな要因だと言えるでしょう。
ベテランと若手の組み合わせが、新しい化学反応を起こす。
コインランドリー経営もマニュアルや長年培ってきたノウハウは数多く存在し、こういったもの沿って運営していけば、比較的経営は安定します。
それに加えて、マーティンが常に若手から新しさを得ているように、コインランドリーと自分の好きなことや得意なことを掛け合わせることで、競合店と顧客を奪い合うレッドオーシャンから抜け出すことができるでしょう。
また、アイディアの組み合わせだけでなく、既存の概念をあらためて問い直すということもイノベーションにつながっていきます。
コインランドリーと自分の好きなことを掛け合わせてレッドオーシャンから抜け出す。
1857年に設立されたフランスのグループセブは、自社で販売する電気フライドポテト調理器の販売数が年々低下し、他社との差別化も上手くいかず悩んでいました。
そこで、業界全体が当たり前に考えていた「最高の調理器をどう開発するか」という概念から、「油で揚げずに、いかにして健康的な食欲をそそるフライドポテトを作るか」という概念に課題を切り替えたのです。
すると、わずかスプーン1杯の油で約900グラムのフライドポテトがつくれ、カロリーは40%、脂肪分は80%もカットできる「アクティフライ」が生まれ、大ヒットしました。
発想を180度変えてみる。
コインランドリーも基本的に洗濯をする場所というのが共通の認識です。
しかし、少し視点を変えて、「ランドリーをしている間、お客さんがゆっくり時間を過ごせる場所」、「ランドリーをしている間に、何か新しいことを学べる場所」という方向から物事を考えると、また、全然違ったビジネスの可能性が見えてくることでしょう。
コンセプトが明確なコインランドリーは、営業や広告の費用がかからない。
どんな業界でも、入って半年から一年間が既存の概念に囚われず、新しく斬新なアイディアを思いつきやす時期なのだと言われます。
コインランドリーという市場が安定している分、それに自分の好きなことを様々な掛け合わせることが自然と差別化に繋がっていくのです。
自分の大好きなことをすることが自然と差別化になり、コンセプトが明確なコインランドリーは人に説明がしやすいので、宣伝に多くの予算を使う必要もありません。
最近はコロナの影響もあってか、様々な地方の街が移住の勧誘を行っていますが、自然が多く、生活費が安いというだけでは差別化にはならない。
コインランドリーも近い将来、立地が良く、清潔感があるだけでは、差別化にならない時代がやってくるかもしれません。
自然が多いだけでは差別化にならないように、コインランドリーも立地だけでは差別化にはならない。
コインランドリーと「○○」を組み合わせたら、面白そうだというアイディアは少し考えればたくさん出てくることでしょう。しかし、それを実際に実行に移せる人は、恐らく1%もいませんから、むしろ、自分の好きなことを実行に移していくということ自体が立派な差別化に繋がっていくのです。
アドビが行った興味深い調査があります。アドビが米国、英国、ドイツ、フランス、そして、日本の18歳以上の成人5000人にアンケートを取り、「最もクリエイティブな国はどこか?」という質問に対して、36%の回答者が日本を挙げ、米国の26%を10ポイント上回ってトップでした。
ところが、同じアドビの調査で、自らを「クリエイティブだ」と考えている日本人は19%にとどまり、ダントツの最下位だったのです。
つまり、他の先進国の人たちから見れば、日本は創造性のポテンシャルに溢れているにも関わらず、当の日本人はその可能性に気づいていないのでしょう。
アイディアを実行に移していくこと事態が差別化につながっていく。
2020年以降は、これまでのあらゆるビジネスモデルが破壊されていく時代です。
だからこそ、今までは絶対に成功しないと言われていたアイディアにこそ、試す価値があるのだと言えます。
人々が日常的に出入りするコインランドリーだからこそ、自分が大好きなことや得意分野を組み合わせて、まだ世の中に存在しない新しいビジネスモデルをつくっていける可能性があるのではないでしょうか。